基礎知識編

【基礎知識編17】表皮を構成する細胞

ここでは、表皮を構成する細胞について細かく見ていきます。

表皮のケラチン

ケラチンは繊維状の構造タンパク質であり、細胞骨格を担う中間径フィラメントの一種ですが、毛幹だけでなく皮膚の角質細胞のバリア機能も担っています。

ケラチンは、細胞の骨組みとして細胞の形を支え、核の位置を固定し、また弾性もあるため外部からの衝撃を受け止め、酸やアルカリに強いため化学的にも安定しています。

また、角化細胞どうしや基底膜とはデスモソームやヘミデスモソームで固定されていますが、ケラチンがその固定結合内に入り込み、細胞どうしをしっかり支える役割も担います。

▲角化細胞の分化とケラチンの発現(引用:University of Michigan Medical School/改)

基底層でのケラチン線維の密度は低くなっていますが、角化していくに従って、細胞内ではケラチンが次々と生み出され、ケラチンの密度が高くなっていきます。

主に、基底層ではTypeⅠケラチンのK14とTypeⅡケラチンのK5が、有棘層や顆粒層ではTypeⅠケラチンのK10とTypeⅡケラチンのK2が産生されていきます。

また、組織によっては基底層の一部でK5とK15が、また手足の一部では有棘層中層からK2が、手の平や足の裏ではK6、K9、K16、K17も産生さるなど、組織によって異なります。

そして、それぞれのケラチンがペアになって二重螺旋構造を構成し、それが集まってトノフィラメント(張細線維)、トノフィブリル(張原線維)という強靭な線維を生み出します。

その後、顆粒層でのケラトヒアリン顆粒内から分解されたフィラグリンというセメント物質が、内部の多数のケラチンを角層において束ね、角化していきます。

ケラチンは、アミノ酸としてシステインを非常に多く含む特殊なタンパク質であり、システインどうしの結合であるジスルフィド結合は共有結合のため非常に強固です。

毛髪や爪のケラチンはシステインの割合が非常に多く、頑丈な構造を作り出し、皮膚のケラチンはシステインの割合が幾分少ないものの、同じように強固な構造を作り出しています。

色素細胞

色素細胞(メラノサイト)は、基底層に並ぶ基底細胞の間に、真皮側にはみ出す形で点在している、やや大型で突起を持った樹枝状細胞です。

色素細胞は、日光露光部や外陰部に多く、真皮にも少量存在し、他には毛器官の毛母、目の光彩や脈絡膜、中枢神経の髄膜、消化管粘膜、副腎などにも存在します。

▲表皮下層の色素細胞(引用:national cancer institute)

色素細胞は、細胞内でメラニンを生成し、それを細胞小器官であるメラノソームに蓄え、隣接する基底細胞や有棘細胞に突起を伸ばしてメラノソームを提供します。

メラニンには紫外線を吸収する作用があり、メラノソームを受け取った細胞は、核の上部に内部のメラニンを移行させ、核帽を作り出して、紫外線からDNAを保護します。

色素細胞は、アミノ酸のチロシンを原料に、銅含有酵素であるチロシナーゼ、ドーパクロームトートメラーゼ(Dct)などの酵素の働きでメラニンを合成します。

また、紫外線にさらされやすい皮膚、体毛、目は特にメラニン色素の生成が活発で、特に紫外線が強い赤道付近に住む人種は、肌の色や目の色、頭髪が黒くなります。

また、メラニンは生体に有害な金属や薬剤、活性酸素と結合しやすい作用があり、細胞分裂が盛んな毛髪にメラニンを取り込むことで、これらの有害物質を排出します。

メラニンを活性化させる因子としては、紫外線やエストロゲン、メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)があります。

メルケル細胞

表皮内には、無髄C線維の自由神経終末が入り込んでいて、痛み、圧力、温度などを感知しますが、触ったものの質感や僅かな凹凸など、細かい情報を伝えることはできません。

この繊細な触覚を担うのがメルケル細胞で、指先の腹や唇、毛包など触覚が敏感な部分に存在し、表皮の基底層の基底細胞の間にあり、有髄Aβ線維の感覚神経と接続しています。

▲メルケル細胞と接続する有髄Aβ感覚神経(引用:コロンビア大学/改)

メルケル細胞は色素細胞と形が似ていて、上方と側方部に角状の突起を伸ばし、細胞内に丸い顆粒である有芯顆粒を持ち、周囲の角化細胞とデスモソームで結合しています。

メルケル細胞にはPiezo2チャネルという巨大なイオンチャネルが多数発現していて、皮膚が押されるなどの刺激を受けるとそのチャネルが開いて、細胞内にイオンが流入します。

すると、細胞内の電位が変化し、有芯顆粒から神経伝達物質が放出され、シナプス接続している感覚神経に興奮を伝え、大脳にて触覚を感知することができるのです。

ランゲルハンス細胞

皮膚は、表皮の「角層」と顆粒層の「タイトジャンクション」という二つの物理的バリアに加え、内部に侵入してきた細菌類などに対応する免疫学的バリアがあります。

それを表皮で担うのがランゲルハンス細胞で、表皮細胞全体の2~4%を占め、胎生期に骨髄によって作られた後、表皮内で自律的に単球から分化、増殖します。

他の免疫細胞同様、動き回る遊走性があるため、隣接細胞との間にデスモソームなどの細胞間接着構造は持たず、多数の樹状突起と抗原輸送を担うバーペック顆粒を内部に持ちます。

▲ランゲルハンス細胞の働き(引用:ベイラー免疫学研究所)

有棘層の上層部を遊走するランゲルハンス細胞は、突起を細胞間隙に伸ばして表皮内を常に監視していて、表皮内に異物が侵入してくると活性化します。

そして、顆粒層のタイトジャンクションを越えてその突起を伸ばし、異物を取り込むと真皮内のリンパ節へ移動して、バーベック顆粒に取り込んだ抗原をT細胞に提示します。

この細胞が活性化して数が多くなり、樹状突起の広がる範囲が増すと、異物への反応が早くなり、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性皮膚炎症を起こします。

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