くせ毛考察編

【くせ毛考察編03】思春期に起こる身体と毛幹の変化

ここでは、なぜ思春期にくせ毛になるのかについて考えてみたいと思います。

思春期に分泌が増える性ホルモン

それでは、思春期になると、一体私たちの体には何が起こるのかを考えてみます。

思春期は「第二次性徴」と呼ばれ、それが始まる2年ほど前になると、脳の視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)が合成、分泌され始めます。

GnRHは下垂体に働きかけ、下垂体前葉から黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)が合成、血中に放出されます。

▲思春期における各種ホルモンの分泌

男性では、LHやFSHが血中を流れて遠く離れた精巣に働きかけ、アンドロゲンの生成、分泌を促し、ヒゲや陰毛を生やし、筋肉質な体にし、男性器が発達して精通を起こさせます。

一方、女性ではLHとFSHは卵巣に働きかけて、顆粒膜細胞からエストロゲンの生成、分泌を促し、乳房を発達させ、体の脂肪が増えて丸みを帯び、初潮が現れます。

ただ、女性でも卵巣や副腎などからアンドロゲンが男性の5%~10%ほど分泌され、わき毛や陰毛を生やす作用を持ちます。

また、男性でも精巣のセルトリ細胞や、皮膚や脳などの全身の末梢組織においても、テストステロンがエストラジオールに変換されることにより、骨形成などを促します。

思春期に分泌が増える成長ホルモン

また、思春期に分泌が増えるホルモンは、アンドロゲンやエストロゲンなどの性ホルモンだけでなく、成長ホルモンも急増して、体の成長を促進させます。

▲年齢による成長ホルモン分泌量の変化

幼少期は、アンドロゲンやエストロゲンなどの性ホルモンの血中濃度は非常に低いですが、成長ホルモンは幼少期から一定程度分泌が続き、徐々に増えて、思春期に最大となります。

成長ホルモンの分泌は、脳の視床下部から成長ホルモン放出ホルモン(GnRH)が生成、分泌されて、下垂体に働きかけることから始まります。

GnRHを受けた下垂体前葉は、成長ホルモン(hGH)を合成、分泌し、肝臓を始めとした全身の末梢組織でインスリン用成長因子ー1(IGF-1)の合成を促します。

そして、末梢組織で合成されたIGF-1や、また下垂体からの成長ホルモンそのものが、それぞれの末梢組織においてタンパク質の合成を促し、身体を急成長させます。

ホルモンの毛包への作用

さて、これらのホルモンは、毛包に対してはどのような作用を及ぼすのか、一般的によくいわれる事象についてまとめてみます。

アンドロゲンの作用
・毛を太くする
・わき毛、陰毛、髭などの性毛を硬毛化させる
・胸毛、すね毛などの体毛を硬毛化させる
・前頭部や頭頂部への毛周期を短縮させる
エストロゲンの作用
・体毛を細くする
・毛にツヤをだす
成長ホルモン(IGF-1)の作用
毛髪を成長させる

アンドロゲンや成長ホルモンは、毛を成長させて毛幹を太くするように働き、エストロゲンは毛をしなやかに、そして細く、薄くするように働くと言われます。

果たしてそれは本当なのでしょうか?

実は、アンドロゲンの毛包に対する作用についての研究は増えてきていますが、エストロゲンや成長ホルモンの作用についての研究は少なく、経験則に基づくものが多いのです。

男女の髪の太さの違い

一般的に言われるのは、男性ホルモンは髪を太くし、女性ホルモンは髪を細く、しなやかにすると言われ、髪の太さに違いを与えるようですが、それは本当なのでしょうか。

▲頭髪の最大直径と最小直径の変化

上は、和歌山県の0歳から80歳以上の男性1024人と女性2046人から、頭頂部の毛髪20本を採取し、毛幹の最大直径と最小直径の変化を調べた表です。

女子は9歳頃、男子は11歳頃から第二次性徴が始まり、それぞれ卵巣からエストロゲン、精巣からアンドロゲンなどの性ホルモンの分泌が増大します。

幼少期から、男性の方が女性より僅かに髪が太く、それは20歳前後まで続いていますが、それ以降、男性は女性に比べ急速に細くなっていきます。

一方、女性の方は、幼少期では男性より僅かに細いものの、20歳を過ぎると逆に男性より太くなり、その太さはずっと続き、45歳頃になってようやく細くなり始めます。

成長ホルモンも毛幹の成長に影響を与えますが、男女で分泌量に大きな違いはないので、この毛幹の太さの違いは、アンドロゲンとエストロゲンの影響によるものと考えられます。

アンドロゲンの毛髪への作用

ここで、実際の男性のアンドロゲン分泌量の変化と、上のグラフでの男性の毛幹の太さの変化を比較してみます。

▲年齢によるテストステロンとエストラジオールの変化

男性では思春期になると、女性より少し遅れてアンドロゲン分泌量が急増し、20歳前後がピークになり、その後は緩やかに減少していきます。

しかし、毛幹の太さは、思春期にアンドロゲンの分泌が増えた時に一時的に女性より細くなり、その後巻き返しますが、20歳を過ぎるとアンドロゲンの減少以上に急激に細くなります。

これは、毛乳頭細胞で、主要なアンドロゲンであるテストステロンがDHTに変換され、前頭部や頭頂部の毛包に対しては毛幹の成長を阻害するように働くためです。

そのため、男性の毛幹は完全に成長しきる前に抜けてしまい、残っている頭髪の毛幹は、まだ成長途中のため、直径が細く、結果として毛が細くなるのです。

アンドロゲンは、胸や腕、すねなど全身の体毛に対しては、成長を促す作用がありますが、逆に、頭髪の前頭部や頭頂部に対しては、成長を阻害する作用があるのです。

同じアンドロゲンなのに、身体の部位で作用が異なるのは、遺伝子発現の際のARコアクチベータに違いがあるからと考えられています。

エストロゲンの毛髪への作用

一方、女性のエストロゲンの分泌の変化を見てみると、思春期に男性より少し早く増え始め、性成熟期は一定を保っていますが、45歳~50歳前後の閉経時には急減しています。

そして、毛幹の太さを見てみると、エストロゲンの分泌と同調するように、思春期に太さが増し、性成熟期はその太さを維持し、閉経時になると急激に細くなっています。

これは、エストロゲンが頭髪に対しは成長を促すことで、毛幹がより長く育ち、結果的に直径が太い毛が多くなるからです。

つまり、エストロゲンは頭髪に対しては成長を促して毛幹を太くし、全身の体毛に対しては成長を阻害することで毛を細くする働きがあるのです。

性ホルモンの毛への作用
アンドロゲン(DHT):体毛を太く濃くする、頭髪を細くする
エストロゲン(エストラジオール):体毛を細く薄くする、頭髪を太くする

このように、アンドロゲンとエストロゲンの毛に対する働きは正反対であり、これが男性の頭は剥げ上がって体毛が濃くなり、女性の頭髪は長くて体毛が薄い理由です。

もちろん、男性にもエストロゲンが、女性にもアンドロゲンが僅かに分泌されていますから、互いのホルモンの作用に対し、拮抗する働きももっています。

毛髪の太さと成長期の長さ

さて、アンドロゲンやエストロゲンなどの性ホルモンは、頭髪の成長を阻害して毛幹の直径を細くしたり、逆に成長を促すことで、太くしたりする作用があります。

▲成長初期から成長期にかけての毛包

なぜ、毛髪が成長すると直径が太くなるのかというと、成長期が長く続くことで、毛包の直径が大きくなり、太い毛幹を生み出せるようになるからです。

成長初期の毛包の直径は小さく、細い毛しか生み出せませんが、成長するにしたがって毛包自体も大きく成長し、太い毛幹が作り出せるようになるのです。

そして、エストロゲンは毛包と毛幹を成長させることで、毛幹の伸びる期間自体が長くなり、結果的に毛周期が長くなります。

逆に、アンドロゲンは毛包と毛幹の成長を阻害するため、毛幹の伸びる期間が短くなり、毛周期が短くなります。

それが、男性の毛周期が3~5年と短く、女性の毛周期が4~6年と長い理由です。

では、毛周期が長くなり、直径が太くなればくせ毛が治るのでしょうか?

それはもちろん違います。くせ毛は、細く短い段階から既にくせ毛なのです。

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