ここでは、細胞内部にある細胞骨格の種類と、その一つである中間径フィラメント、ケラチンの細かい分類について解説します。
細胞骨格とは
細胞はヒトでは270種類もあり、1mもある坐骨神経細胞など実に多種多様な形をしていますが、そのままでは細胞自身の形状を維持することができません。
細胞内には、「細胞骨格」と呼ばれるタンパク質の骨組みが無数に張り巡らされていることによって、多種多様な形を支えているのです。
細胞骨格は、その細胞形状の維持の他にも、細胞自身の運動や、細胞内での物質の輸送など、細胞の運動にも関与します。
▲細胞骨格の種類(引用:Eukary-Oats)
細胞骨格には、細い順に、アクチンフィラメント(微細繊維)、中間径フィラメント(中間径繊維)、微小管の3種類に分けられます。
3種類とも、アクチン、ケラチン、チューブリンと呼ばれるタンパク質が集まって繊維質を構成しますが、それぞれのタンパク質の結合の仕方や、その働きはかなり異なります。
アクチンフィラメント
アクチンフィラメント(actin filament)は、球状タンパク質のアクチンが多数結合したものが、二重螺旋を形成し、直径は7nmほどになります。
▲アクチンフィラメントの構造(引用:Quizlet)
アクチンフィラメントは細胞膜の裏側に網目状になって張り巡らされ、細胞の形を維持する、いわゆる家の壁のような働きがあります。
また、白血球などのアメーバ運動では、アクチンフィラメントを構築したり分解したりすることで、細胞自体の運動を起こします。
また、筋細胞では、アクチンフィラメント上をモータータンパク質と呼ばれるミオシンが手繰りよせることで筋収縮を起こします。
微小管
微小管(microtubule)は、球状タンパク質のチューブリンがつながり、それが13本円形状に集まって管状構造を作ったもので、直径は25nmほどになります。
▲微小管の構造(引用:Sutterstock)
アクチンフィラメントと同じく細胞の形を維持し、核分裂の際の紡錘糸、神経細胞の軸索繊維の構造なども担い、いわゆる家の廊下のような役割を果たします。
また、常に伸びたり縮んだりを繰り返すため、細胞内の運動にも関与し、小胞体からゴルジ装置への小胞の輸送、神経細胞の軸索繊維でのシナプス小胞の輸送などにも関わります。
中間径フィラメント
中間径フィラメント(intermediate filament)は、タンパク質の二次構造であるαヘリックス構造が、32本寄り集まった構造をしていて、直径は10nmほどになります。
▲中間径フィラメントの構造
細胞内の力を受けやすい部位に多く分布し、細胞の形を維持するため、アクチンフィラメントや微小管と比べて非常に安定していて、いわゆる家の柱のような役割を果たします。
また、アクチンフィラメントや微小管と異なり、構成するタンパク質は非常に多岐にわたるため、同じ中間径フィラメントでもいくつかの種類に分けられます。
その中には、細胞の骨組みになる「ケラチン」、核膜の内側を補強する「ラミン」、神経細胞の軸索突起の骨組みになる「ニューロンフィラメント」などが存在します。
中間径フィラメントの分類
中間径フィラメントを構成するタンパク質は複数の種類があり、それによって二次構造に微妙な違いが生じるため、TypeⅠ~TypeⅥの6つのクラスに分けられます。
▲中間径フィラメントの6つの分類(引用:Karim Hnia)
最も主要なタイプが、TypeⅠの酸性ケラチンとTypeⅡの中性または塩基性ケラチンで、細胞骨格を形成すると共に、皮膚の角化細胞や毛、爪などに強度を与えます。
TypeⅢのデスミンは平滑筋や骨格筋、心筋などの筋細胞に、ビメンチンは線維芽細胞などの間葉系細胞に、GFAPは星状膠細胞(アストロサイト)などに用いられます。
TypeⅣはニューロンフィラメントで神経細胞の軸索突起や樹状突起などの細胞骨格に、TypeⅤはラミンですべての細胞の核膜を内側から補強し、TypeⅥのネスチンは中枢神経系の幹細胞に用いられます。
上の図では、TypeⅠ、TypeⅡとも2本集まって二重螺旋構造をしていますが、実際のケラチンは、TypeⅠとTypeⅡがそれぞれペア組んで二重螺旋構造を構成します。
ケラチンのさらに細かい分類
中間径フィラメントでの6種類の分類では、TypeⅠとTypeⅡとも同じケラチンです。
そして、その2種類のケラチンはそれぞれさらに細かく分類され、TypeⅠが28種類、TypeⅡが26種類になり、合計するとケラチンの種類は54種類になります。
▲ケラチンの種類(引用:Jacob, Justin T., et al
そして、それぞれのケラチンには番号が付けられ、TypeⅠが「K9~40」、TypeⅡが「K1~K8、K71~K86」になります。
その中でも、ハードケラチンと呼ばれる毛幹を構成するヘアケラチンは、TypeⅠが「K31~K40」の9種類、TypeⅡが「K81~K86」の6種類になります。
「K」は英語の「keratin(ケラチン)」ですが、「cytokeratin」ともいうため「CK1」とも表記し、ケラチン遺伝子に関しては「Krt1」などと表記します。
ケラチンは、TypeⅠとTypeⅡがペアを組みますが、そのペアは組織によって異なり、表皮の角化細胞ではK1とK10、K5とK14が、角膜ではK3とK12、肝細胞ではK8とK18などの組み合わせになります。
そして、TypeⅠケラチンの遺伝子は、17番染色体の17q21.2の領域に、TypeⅡケラチンは12番染色体の12q13.13の領域にコードされています。