基礎知識編

【基礎知識編20】皮膚の血管、リンパ管

ここでは、皮膚の真皮や皮下組織を流れる血管やリンパ管について解説します。

皮膚の血管網

さて、皮膚や毛包をはじめ、全身の細胞に酸素や栄養素を供給しているのは血管内を流れる血液であり、この血流こそが毛髪の成長には最も重要な役割を果たします。

▲皮膚を流れる毛細血管網(引用:あたらしい皮膚科学第1版)

皮膚では血管は、筋肉間や深層脂肪組織を走り、その動脈は枝分かれして上に登り、真皮下層と皮下組織の間に平面的に広がる皮下血管叢ひかけっかんそうという網目状の構造を作り出します。

そして、そこから再び分岐して血管が上に登り、真皮の乳頭下層にも同じく平面的に広がる乳頭下血管叢にゅうとうかけっかんそうという網目状の構造を作り出します。

そこから、再び血管が枝分かれして上り、毛細血管となって真皮乳頭部分に入り込み毛細血管係蹄けいていというループ構造を作ります。

しかし、毛細血管は表皮に入り込むことはなく、そこから染み出た組織液が、表皮の細胞などに栄養分を送り込みます。

その後、毛細血管は静脈系になり、動脈系の逆を進むように皮膚の奥深くへと下降し、乳頭下血管叢、皮下血管叢を作り出して、皮下組織の静脈へと流れ込み、心臓へと戻ります。

血管の種類と構造

血管の構造は、一番外側を覆う外膜(疎性結合組織)、その内側の中膜(平滑筋と弾性線維)、そして血管の内壁である内膜(内皮細胞と結合組織)の3層構造になっています。

動脈系は大動脈(弾性動脈)、動脈(筋性動脈)、細動脈、静脈系は大静脈、静脈、細静脈と細くなり、動脈と静脈を繋ぐのが最も細い血管である毛細血管です。

▲血管の種類と構造(引用:earthsla)

心臓から繋がる一番太い大動脈は、中膜に豊富な弾性線維(エラスチン)を持ち、弾力性に富むため、ポンプの役割で血液を送り出すことで、心臓の補助的役割を果たします。

動脈(筋性動脈)は弾性線維は少なく、平滑筋に富んで血流速度を調節し、直径0.2mm以下の細動脈は僅かに平滑筋を持ち、毛細血管への血流を調節しています。

毛細血管は内皮細胞と基底板だけからなる最も細い血管ですが、その細胞間隙から血漿と共に酸素やグルコースなどの栄養素が染み出て、細胞組織との間で物質交換を行います。

組織細胞は、酸素やグルコースなどの栄養素からエネルギーであるATPを作り出し、二酸化炭素や乳酸、ケトンなどの老廃物を細胞外に間質液として排泄します。

こられの老廃物を含んだ間質液は再び毛細血管に入り、静脈系へと流れますが、毛細血管に入りきらなかった一部の間質液や、分子の大きなタンパク質は毛細リンパ管に入ります。

静脈系はいずれも平滑筋が薄く、収縮と拡張により局所の血流量を調整しつつ、逆流を防ぐ弁が付けられ、周囲の筋肉の動きの補助を受けて血流を心臓へと戻します。

毛細血管と血管吻合

血液は心臓から出ると、大動脈→動脈→細動脈→毛細血管と流れ、末梢組織の細胞と物質交換などを行った後、毛細血管→細静脈→静脈→大静脈へと流れ、心臓へと戻ります。

さらに細かく見ると、細動脈はさらに細いメタ細動脈に分岐する優先路(大通り毛細血管)を通り、真性毛細血管に分岐しつつ、静脈側で物質交換を行います。

▲末梢組織の微小循環網(引用:oer services)

また、細動脈からそのまま細静脈に繋がっている動静脈吻合どうじょうみゃくふんごう(グロムス装置、AVA血管)と呼ばれる部分もあり、こちらは毛細血管を通らないため、細胞との物質交換を行いません。

「吻合」とは血管同士が合わさるという意味で、動静脈吻合とは動脈と静脈が毛細血管を経ずにそのまま繋がっている構造のことです。

その動静脈吻合部分の平滑筋には、自律神経の交感神経が密に分布していて、平滑筋を収縮・弛緩させることで、毛細血管への血流を調節しています。

また、細静脈から毛細血管に移行する入口には、前毛細血管括約筋という環状の平滑筋があり、酸素と二酸化炭素の分圧、オータコイドなどのホルモンにより収縮・弛緩します。

真性毛細血管は、普段は前毛細血管括約筋により毛細血管の入り口が収縮され、血流がない状態になっていますが、体温上昇時などはその平滑筋が弛緩することで血流が流れます。

この動静脈吻合の構造は、主に皮膚で発達していて、手足の指先、鼻、耳など、身体の抹消部分では顕著に見られ、深部体温の調整の働きを担っています。

血液の成分と役割

血管内を流れる血液は、約45%が赤血球や白血球、血小板などの細胞(固形)成分で、残りの55%が水や電解質、血漿タンパクなどの血漿と呼ばれる液体成分に分けられます。

▲血液の成分(引用:看護roo!)

細胞成分は、その99%以上が酸素を運ぶための赤血球で、残りは免疫を司る顆粒球・リンパ球などの白血球や、損傷した血管を塞ぐ役割を担う血小板です。

液体成分は、約91%が水分で、約7%がアルブミンなどの血漿タンパク、約1%がナトリウムイオンなどの電解質、残り1%がグルコースやアミノ酸、ホルモンなどです。

赤血球は肺から受け取った酸素を細胞に届けて二酸化炭素を受け取り、白血球は血管内や組織内に侵入した異物から身体を守り、血小板は傷ついた血管を修復します。

水は血球などを運搬する媒体となり、血漿タンパクの約60%を占めるアルブミンは膠質浸透圧の作用により血液の水分を保持し、また薬物やホルモンなどの輸送も担います。

血液中には、食事から摂られた糖(グルコース)や脂肪酸、アミノ酸なども含まれ、細胞に届けられることで、エネルギー源やタンパク質、ホルモンなどの原料となります。

つまり、血液の役割としては、身体の末梢組織の細胞に対して、細胞の活動のエネルギーとなる酸素や糖、アミノ酸などの栄養素を届けるという、非常に重要な役割を担うのです。

また、もう一つの血液の役割としては、食べ物の消化時や筋肉などの運動時に発生する熱を全身の細胞へ届けるという作用も担い、全身の体温を高く保つ効果があります。

血流による体温調節

さて、生命維持に重要な臓器である心臓や肝臓、腎臓、肺、脳などの内臓は身体の内部奥深くにあり、その深部体温は酵素が活発に働くことができる37℃前後に保たれています。

血液は熱を運ぶ役割を持ちますが、外気温が急激に低下すると、外気に近い皮膚表面を流れる血液が冷やされ、その血液が循環することで深部体温が下がってしまう事態になります。

▲外部環境による体温の変化(引用:Simon Fraser University

それを防ぐため、外気温の低下を感知すると交感神経が優位になり、末梢組織の前毛細血管括約筋が締められ、血液が動静脈吻合部を通ることで、毛細血管の血流量が減らされます。

その結果、末梢組織を流れる血流は減り、皮膚温が下がって手足がかじかんだりしますが、生命維持に重要な深部体温は一定に保つことができるのです。

また、怪我などで大量出血した時や、献血などで多くの血を抜いた時も、同様に生命維持に重要な内臓に血液が配分され、末梢組織への血流は減らされることになります。

このように寒冷時や出血時などは、より重要な内臓の保護を優先し、生命維持において優先度が比較的低い、手足の先や鼻、耳など、身体の抹消部分を犠牲にしているのです。

頭皮は、寒冷時でも比較的血流が保たれている部位ですが、出血時などで血液量が減ると、頭皮の血流も優先的に減らされ、毛髪の成長に大きな影響を与えます。

また、逆に外気温が上がると、深部体温の上がりすぎを防ぐため、今度は前毛細血管括約筋が緩んで、皮膚表面の毛細血管の血流を増やし、外気に触れることで熱を逃がします。

また、汗腺への血流も増やして、皮膚表面から水分を蒸発させることで、深部体温の上がり過ぎを防ぐのです。

通常は、心拍出量の3~6%程度の血液が皮膚に配分されますが、極寒の地だとほぼ0%に、猛暑時や運動時などは最大30%程度まで増やされ、その血流量は大きく変化します。

毛包、脂腺、汗腺を流れる血管

また、毛細血管は、真皮や皮下組織の毛包や脂腺、汗腺などの付属器周囲にも張り巡らされ、血液を供給することで、細胞活動に必要な酸素や栄養素を届けています。

▲毛包、脂腺、汗腺に流れる毛細血管(引用:新しい皮膚科学第3版)

真皮の皮下血管叢と乳頭下血管叢から枝分かれした毛細血管は、毛包、脂腺、汗腺などの付属器の周りをグルグルと取り囲みます。

毛包の血管は、下方から毛乳頭内部にも入り込みますが、ほとんどは結合組織性毛包の周囲をグルグルと走っていて、表皮由来の外毛根鞘や内毛根鞘には入り込みません。

毛乳頭内部の毛細血管は、毛母細胞の分裂や色素細胞の働きに関わり、結合組織性毛包を走る毛細血管は毛包や毛幹を大きく成長させることに関与します。

毛には成長と退縮を繰り返す毛周期がありますが、成長期には特にこの毛細血管網がよく発達し、毛包が委縮する退行期は毛細血管網も疎になるという、変化があります。

よく、育毛剤メーカーの毛包の図で、血管が毛乳頭内部にしか入っていないように描かれてる場合がありますが、これは簡略化した図であって、正確とは言えません。

また、汗腺はコイル状に巻いていますが、そこに毛細血管が編み込むように配置され、血液中の水分を吸い上げ、それを汗として蒸発させることで、体温調節を行っています。

リンパ管

リンパ管は、毛細血管では回収できなかった大きな老廃物やタンパク質、過剰な組織液などを回収する管です。

毛細血管から染み出た血漿成分は、組織液として各細胞に酸素や栄養素を届け、二酸化炭素(重炭酸イオン)や新陳代謝産物などの老廃物を回収して、再度毛細血管に戻ります。

▲毛細血管とリンパ管(引用:differencebetween.net)

しかし、分子量の大きい物質やタンパク質などは、直径7μmという細い毛細血管では回収できず、すぐ近くにある直径40~100μmの毛細リンパ管で回収されます。

リンパ管は、血管とは異なり始点と終点があり、皮膚では乳頭下層付近にある毛細リンパ管から始まり、回収された組織液(間質液)はリンパ液(リンパ)と呼ばれます。

毛細リンパ管は、真皮の前集合リンパ管、皮下の表層・深層集合リンパ管と流れ、途中で数千ものリンパ節を経てからリンパ本管に集まり、最終的に鎖骨下静脈に流れ込みます。

リンパ節は、リンパ管の途中に数多くある豆のような装置で、ここに多数のリンパ球やマクロファージが集まり、リンパ液内に侵入した細菌や癌細胞などの異物と戦います。

喉の奥にある扁桃腺はリンパ節の一つで、風邪を引くと腫れることがありますが、これは扁桃腺の中で増殖したリンパ球が細菌類と戦ったために起こる現象です。

リンパ管は静脈と同じように、内側に逆流を防ぐ弁を持ち、周囲の筋肉の動きなどによってゆっくりと流れますが、最近では能動的に動いていることも明らかになってきました。

次へ▶【基礎知識編21】皮膚の脂腺、汗腺、感覚受容器