ここでは、毛髪の形状に深く関わると考えられる細胞接着について解説します。
細胞どうしの接着の種類
ヒトは37兆個もの細胞から出来ていますので、細胞どうし、または細胞とコラーゲンなどの細胞外基質とが繋がっていないと組織構築ができず、バラバラになってしまいます。
そのためには、細胞どうしを強固に結合する物質が必要であり、それが細胞膜を貫通するようにして、隣の細胞と結合しているさまざまなタンパク質です。
▲細胞どうしの結合の種類(引用:Pearson Education.Inc.)
細胞接着には、大まかに密着結合、固定結合、連絡結合に分けられ、異物の侵入を防いだり、細胞どうしの物質のやり取りを担う働きもあります。
細胞接着を担うタンパク質で主なものが「カドヘリン」で、細胞の外の部分でカドヘリンどうしが結合する性質があります。
そして、細胞内ではアクチンフィラメントや中間径フィラメントなどの細胞骨格とも結合することにより、細胞外からの力に対抗する働きを担っています。
密着結合
密着結合は「タイトジャンクション」とも呼ばれ、細胞どうしを隙間なく密着させるための結合で、液体や分子、イオンなどが細胞間を自由に通過できないようにしています。
▲密着結合の構造(引用:Khan Academy)
密着結合を構成するのは、クローディンやオクルディンという、細胞膜を貫通して隣の細胞と結合しているタンパク質で、これが網目状に幾重にも張り巡らされています。
次に紹介する固定結合は、細胞間の接着は非常に強固ですが、どうしても細胞間に20nm程度の隙間が生じ、水やイオン、タンパク質が自由に通過してしまいます。
そのため、密着結合は固定結合の上部に設けられ、皮膚では水や細菌などの異物の侵入を防ぎ、消化管の粘膜では栄養分が細胞間を通って直接血管に入るのを防いでいるのです。
また逆に、体内の水分が外部に喪失しないよう保持する働きもあり、カドヘリンが発現しない疾患では、体内の水分を保持することができずに死に至るものもあります。
固定結合(細胞間どうし)
固定結合は、細胞接着の基本となる結合で、「アドヘレンス結合」や「デスモソーム」と呼ばれる種類があります。
▲細胞骨格の種類(引用:Hala Elmazar)
アドヘレンス結合は、E-カドヘリンという細胞膜を貫通するタンパク質が互いにジッパーのように噛み合い、カテニンというタンパク質を介して、細胞内でアクチンフィラメントと結合しています。
デスモソームは、同じくカドヘリンの一種であるデスモコリンやデスモグレインというタンパク質で繋がり合い、デスモプラキンなどのタンパク質を介して、細胞内では中間径フィラメントであるケラチンが結合しています。
デスモソームは、皮膚、心筋、子宮頚部によく見られますが、デスモソームの異常は体液が外部に漏れ出たりする症状が出るため、さまざまな疾患と関連しています。
そして毛包では、これら固定結合の異常により、毛包細胞どうしでの接着が不十分になると、毛包の左右非対称の発達につながり、くせ毛を生じると考えられます。
連絡結合
連絡結合は、細胞どうしを結合すると共に、その結合タンパク質に穴が開いていて、細胞どうしで物質のやり取りができる構造をしていて、ギャップ結合などがあります。
▲連絡結合の構造(引用:Course Hero)
ギャップ結合は、コネキシンというタンパク質が集まったコネクソンがチャネルを構成することで、隣り合う細胞と結合すると共に、イオンや小さい分子のやり取りを行います。
つまり、隣り合う細胞どうしが電気的に、また代謝的に物質を共有する働きがありますが、タンパク質や多糖類など大きな分子は通過できません。
また、細胞が障害を受けると、ギャップ結合の通路は閉じられて、障害を受けた細胞から他の細胞へ障害が広がるのを防ぐ働きもあります。
固定結合(細胞と細胞外基質)
細胞と細胞外基質との結合には、「ヘミデスモソーム」と「フォーカルアドヒージョン」と呼ばれる構造があります。
細胞外基質(細胞外マトリックス)とは、細胞が細胞外に分泌したコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンなどのタンパク質のことです。
▲細胞と細胞外基質との結合(引用:Science Direct)
ヘミデスモソームが見られるのは、後に説明する表皮の基底細胞などで、インテグリンというタンパク質が、ラミニンを介して、真皮のコラーゲンなどと結合します。
一方、フォーカルアドヒージョンは、線維芽細胞などの動く細胞に見られ、インテグリンが細胞外基質のフィブロネクチンやラミニンと結合し、細胞内ではアクチンフィラメントが結合しています。