ここでは、皮膚の3層の内、毛の生まれる部分である「真皮」について解説します。
真皮とは
真皮は、表皮基底膜の下層に広がる皮膚の本体部分で、厚さは0.5~1.7mm程度、表皮の15~40倍もの厚さにもなります。
真皮は、表皮のように細胞が整然と並んでいる訳ではなく、膠原線維や弾性線維という線維芽細胞から産生された繊維状のタンパク質が複雑な網目構造を作っています。
▲真皮を構成する線維や細胞(引用:easy notecards)
膠原線維は非常に強靭で、機械的な外力から体内を保護し、皮下にある全ての物を支えて体の形状を維持する役割があり、弾性繊維の方は膠原繊維を支え、皮膚に弾力性を与えます。
真皮の強靭さが分かるのが牛革などの動物の皮製品で、動物の皮膚を剥いで表皮部分を取り除き、真皮部分だけを利用したもので、かつては最も強靭な素材でした。
真皮は加齢と共に薄くなり、膠原線維が下部の皮下脂肪組織を抑えられなくなると、皮膚にたるみが生じ、弾性線維が減少すると弾力性がなくなりシワが生じます。
真皮の構造
真皮の構造は、表皮側から「乳頭層」と「網状層」に分けられ、乳頭層の下部を「乳頭下層」と分類する場合もありますが、構成成分は乳頭層と変わりません。
▲真皮の構造(引用:新しい皮膚科学第3版)
真皮は表皮とは異なり、明確に分けられる境界はなく、3層とも主に膠原線維(コラーゲン)、弾性線維(エラスチン)、基質(細胞外マトリックス)などで占められています。
乳頭層は、波状に表皮部分に入り込んで真皮乳頭を形成し、その部分に細い膠原線維や弾性線維がループ状になって入り込んでいます。
乳頭層には同時に毛細血管も入り込み、表皮の角化細胞に栄養分を送ることで細胞分裂を促していて、この構造は毛乳頭と毛包の関係と同じといえるでしょう。
また、掌や足の底は表皮が分厚いので乳頭層が非常に発達し、表皮の奥深くへ入り込むことで、表皮の角化細胞へ栄養分を送り届けています。
また、網状層は膠原線維、弾性線維などの線維成分が太く、密であり、毛細血管や神経が走り、毛包、脂腺、汗腺などの付属器が多数見られます。
膠原線維(コラーゲン)
真皮の70~90%の大部分を占めるのがこの膠原線維で、一般的にコラーゲンなどと呼ばれ、ケラチンと同じ繊維状の構造タンパク質です。
膠原線維は、皮膚の真皮の他にも、骨、軟骨、腱などにも分布し、ヒトの全てのタンパク質の約25%をも埋めるほど多くなっています。
膠原線維は非常に強力な線維で、容易にはちぎれず、皮膚に加えられる機械的な外力から耐え、下にあるすべての物を支えて身体の形状維持する働きがあります。
▲コラーゲン線維の構成(引用:ケンタッキー大学病院)
膠原線維は、線維芽細胞の粗面小胞体で合成されたα鎖と呼ばれるポリペプチド鎖が、3本集まり、三つ編みのように編み込まれることでプロコラーゲンを構成します。
そして、酵素の働きで両端が切断されてトロポコラーゲンになり、それらが少しずれて水素結合してコラーゲン原線維を作り、それらがさらに会合してコラーゲン線維となります。
コラーゲン線維はアミノ酸組成の違いにより28種類に分けられ、真皮ではⅠ型コラーゲンが80%、Ⅲ型コラーゲンが15%、残りがⅤ型コラーゲンになります。
真皮の網状層では非常に太いⅠ型コラーゲンが主で、乳頭層では細いⅢ型コラーゲンとⅤ型コラーゲン、基底膜ではⅣ型、Ⅶ型、17型コラーゲンなどからなります。
膠原線維は、皮膚の表面に対してほぼ平行に走りながら、3次元の立体構造を取り、織物を編むように絡み合っています。
線維の走行方向は身体の部位で決まっていて、これを皮膚割線(ランガー線)と呼び、手足では縦方向、胴体では横方向、頭部では前後方向に走っています。
弾性線維(エラスチン)
弾性線維も、膠原線維と同じく繊維状の構造タンパク質の一種で、真皮の約2~5%程度を占め、線維芽細胞から産生され、膠原線維どうしを結びつける働きをしています。
弾性線維は、膠原線維のような強靭さはありませんが、ゴムのように伸び縮みする作用があるため、皮膚に加わる外力に対して緩衝作用を持ち、肌にハリを与えます。
そのため、皮膚では皮下脂肪の乏しい顔面や頭皮に多く、皮下脂肪の代わりに外力からの緩衝作用を担い、生体を保護します。
また、柔軟性や伸縮性が必要な組織にも存在し、肺では約20%、動脈では約50%、靭帯では約80%が弾性線維からなり、それぞれの組織で伸縮機能を担っています。
▲エラスチン線維の伸縮(引用:横浜市立大学医学部)
弾性線維の主成分はエラスチンという繊維状のタンパク質で、周囲をフィブリリン1、フィブリリン2という糖タンパク質などで構成されたミクロフィブリルが取り囲んでいます。
真皮の乳頭層では弾性線維の繊維が細く、ループ状の走行をしていますが、網状層の深部に行くほど太くなり、膠原線維の間を均等に走っています。
弾性線維は年齢とともに失われ、肌のシワの原因になりますが、血管では動脈硬化や心筋梗塞、脳血栓の原因になり、靭帯の伸縮性が失われると怪我をしやすくなります。
基質(細胞外マトリックス)
膠原線維や弾性線維の間を埋めているのが、多糖類や糖とタンパク質が結合した高分子などからなるゲル状の無定形の物質で、これらを基質(細胞外マトリックス)と呼びます。
▲プロテオグリカンの構造とその集合体(引用:トスカニ化粧品)
多糖類にはヒアルロン酸やデルマタン硫酸などのグリコサミノグリカン(GAG)、糖タンパク質にはプロテオグリカンやフィブロネクチンなどがあります。
グリコサミノグリカンは、2糖の繰り返し単位が直鎖上に結合した多糖類で、ヒアルロン酸やデルマタン硫酸などがあり、水分保持や他の線維の支持、基質の保持に働いています。
特にヒアルロン酸は、グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンの2糖が繰り返した高分子で、多くの水分を保持することができ、大きく膨潤して真皮内を満たします。
そのGAGがコアタンパク質に多数結合したものがプロテオグリカンで、さらにヒアルロン酸や膠原線維と会合して組織を形成し、組織の圧縮に対する抵抗性を生み出します。
フィブロネクチンなどの糖タンパク質は、タンパク質と糖鎖が結合した分子で、基質同士の結合や、細胞が基質に付着するのを促進するなどの働きをします。
線維芽細胞
真皮の主要な細胞性成分が線維芽細胞で、膠原線維や弾性線維、プロテオグリカンなどを生み出したり、それらを分解したりして、真皮の成分を調整している紡錘形の細胞です。
▲活性化型の線維芽細胞(引用:iStock)
線維芽細胞は真皮が成熟すると活動を停止していて、普段は活性化が弱い「線維細胞」として、突起を伸ばして膠原線維などに結合しています。
しかし、皮膚が損傷するなどすると、副腎皮質ホルモンや甲状腺ホルモンの作用で活性化型の「線維芽細胞」となり、大量の膠原線維などを生み出して、皮膚の修復を図ります。
また、線維芽細胞は血管周囲にも点在し、血管の機能が低下すると、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)という成長因子を放出し、これが血管の修復、血管の新生を担います。
線維芽細胞は比較的未分化な細胞であり、脂肪細胞、軟骨芽細胞、骨芽細胞への分化能もあるとされ、異物を貪食する作用も兼ね備えます。
組織球(マクロファージ)
免疫機能の自然免疫を担うのが組織球で、白血球の一種であり、真皮固有のものと、血管内で白血球の一種の単球として存在していたものが、皮膚内に移行してきたものがあります。
▲単球とマクロファージ(引用:Duane W.Sears/改)
組織球は、体内に侵入してきた細菌などの異物や死細胞などを見つけると、活性化されたマクロファージとなり、自ら移動して貪食(食べる)する体内のお掃除屋さんです。
組織の炎症の初期は白血球である好中球が担いますが、後期はマクロファージが集まって異物や死細胞などを貪食し、細胞内の食胞(ファゴソーム)に取り込まれます。
食胞はリソソームと融合することでファゴリソソームを形成し、異物は酵素により破壊され、そのまま消化されたり、細胞外に排出されたりします。
取り込んだ異物が危険だと判断すると、異物を断片化し、細胞表面に露出させ、リンパ節に移動して、その情報をヘルパーT細胞に伝える抗原提示を行います。
また、3~6年のヘアサイクルがある毛包においても、退行期に移行して死んだ毛包細胞は、マクロファージに貪食されて、綺麗に掃除されます。
形質細胞
形質細胞は、リンパ球であるB細胞から分化した、特定の異物に対する抗体を産生する、抗体産生細胞で、主にリンパ節や骨髄に存在します。
▲抗原提示から形質細胞の分化(引用:看護roo!)
体内に異物(抗原)が侵入すると、マクロファージなどがそれを貪食し、リンパ管のリンパ節に移動して、ヘルパーT細胞に抗原提示によりその情報を伝えます。
すると、ヘルパーT細胞が活性化され、インターロイキンなどを放出することにより、B細胞を形質細胞に分化・増殖させ、一部は記憶B細胞となって長期間残ります。
形質細胞は、その異物に対する抗体である免疫グロブリンを産生し、血液中に放出することで、体中をかけ巡り、異物と結合する抗原抗体反応を起こします。
すると、それを目印にキラーT細胞やマクロファージなどが積極的に貪食することで、異物を排除する働きを担う、獲得免疫の機能があります。
肥満細胞(マスト細胞)
肥満細胞は、細胞内に多数の顆粒を有し、細胞膜にIgE受容体を持つ生体防御機能を担う細胞ですが、その反応が過剰なため、Ⅰ型アレルギー症状に関わります。
▲肥満細胞(引用:Microbe Notes)
肥満細胞の細胞表面のIgE受容体に、形質細胞から放出されたIgE抗体が結合すると、異物に対し敏感に反応する「感作状態」になります。
そこへ、体内にアレルギー物質が侵入し、それと結合すると、顆粒中のヒスタミン、プロスタグランジン、ロイコトリエン、血小板活性化因子などを産生、放出します。
これらの化学物質により、血管の拡張や透過性亢進を通して炎症、粘液の分泌、気管支の収縮を起こし、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、喘息などのⅠ型アレルギー症状を起こします。
肥満細胞は他の臓器にも存在しますが、それらは血液由来のものであり、皮膚の肥満細胞は胎児期に皮膚から分化したもので、少し形態が異なります。
皮膚では、真皮や皮下組織の毛細血管や神経組織、付属器周辺に密着する形で存在し、サブスタンスP、CGRPなどの神経伝達物質により活性化されます。