基礎知識編

【基礎知識編25】毛の発生

ここでは、胎児期に毛が発生する過程について解説します。

毛は皮膚が変化したもの

さて、ここまでは、毛や毛包は皮膚の表皮と同じ上皮系成分であり、表皮の細胞が真皮側に陥入してできることを説明してきました。

つまり、毛は皮膚が変化してできたものなのです。

そして、この現象は進化の過程上での出来事ではなく、我々人類でも、お母さんのお腹の中にいる胎児期から観察することができる現象なのです。

ここでは、その毛の発生過程を解説したいと思います。

原始毛芽の形成

さて、お母さんの子宮内で出会った卵子と精子から受精卵が誕生し、子宮内膜で細胞分裂を繰り返しながら、次第にヒトの形が作り上げられます。

▲毛の発生の過程(引用:Zee College of Pharmacy

そして、胎生9週(妊娠9週)頃に、胎児の皮膚である2層からなる胎生表皮の所々で細胞が活発に増殖しはじめ、「プラコード」と呼ばれる肥厚が形成されます。

また、その下部の真皮層にも線維芽細胞が集まりはじめ、「真皮集塊」と呼ばれる肥厚を作り上げ、この構造を「原始毛芽」と呼び、毛の発生の始まりです。

このプラコードと真皮集塊による原始毛芽は、お互いがさまざまなシグナル因子を放出し、相互に連携し合うことで形成されていきます。

毛包の形成

毛芽の先端部は、真皮のコラーゲンやプロテオグリカンなどの細胞外基質を分解したり再編したりして、足場を緩め、真皮深層へと陥入していきます。

▲毛の発生の過程(引用:Zee College of Pharmacy

そして、胎生3ヶ月ころになると、毛芽は真皮集塊に引き寄せられるように、40~45度の傾斜をつけて奥へと入り込んでいき、これを「毛杭」と呼びます。

胎生4ヶ月くらいになると、毛杭は真皮集塊を取り囲むようにして、下部が大きく膨らんだ「毛球」を作り、それによって包み込まれた真皮集塊が「毛乳頭」です。

その後、毛包上皮細胞に二つの肥厚が生じ、一つが脂腺に、もう一つがバルジへと分化し、バルジ領域に毛包幹細胞が係留されます。

やがて、毛乳頭は周囲の細胞を毛母細胞へと分化させて、増殖を促し、外毛根鞘や内毛根鞘などの毛包や、毛幹の形成を促し、ついに毛が誕生します。

胎生毛の形成

その後、胎生5ヶ月までに、胎生毛(産毛、毳毛)という胎児の毛が、毛の生えない掌や足の裏を除いて全身で完成します。

胎生毛は色素がなく、太さ0.05mm、長さ数mmと非常に短く、柔らかいのが特徴で、本来の「産毛」とはこの胎生毛をいい、一般的に使われている「産毛」は軟毛のことです。

この頃に完成された毛包の数は全身で約500~600万個にもなり、頭部では約10万個です。この頃作られた毛包は一生増えることはありません。

出来上がった胎生毛は、胎生8ヶ月までに休止期に入ってしまいます。

頭髪や眉毛の硬毛化

その後、出生が近づくにつれ、休止期に入っていた毛包が再び活動を始め、毛母細胞は色素がある細い「軟毛」を作り上げます。

そして、いよいよお母さんのお腹の中から誕生する時です。

全身の体毛は軟毛のままですが、頭髪は数か月以内に有色素で太い「硬毛」に変わり、この硬毛のことを「終毛」とも呼びます。

そして、眉毛、まつ毛も1年以内に硬毛化します。

頭髪や眉毛などの硬毛、全身の軟毛はその後、成長と退縮を繰り返す「毛周期」というサイクルに入り、毛幹を作っては抜けるという工程を繰り返していきます。

性毛の硬毛化

その後、成長が進み、思春期を迎えたヒトは精巣や卵巣、副腎から性ホルモンが、下垂体前葉からは成長ホルモンが多量に分泌され、身体の急成長を促します。

そして、性ホルモンのアンドロゲンは、幼少期の男女において軟毛だった腋毛や陰毛などを発達させて硬毛化し、男性ではヒゲやすね毛、胸毛なども硬毛化します。

それらの第二次性徴期において性ホルモンに影響される毛を「性毛」と呼び、頭髪やまゆ毛、まつ毛など性ホルモンの影響を受けにくい毛を「無性毛」と呼びます。

といっても、頭髪やまゆ毛、まつ毛は性ホルモンの影響を受けにくいだけであって、実際には第二次性徴の性ホルモンの影響を受け、毛が濃くなったり、薄くなったりします。

毛包は表皮、毛乳頭は真皮由来の細胞

さて、これらの毛の発生の過程を知ると、「毛」は「皮膚」が変化したものであることがよく分かったと思います。

さらに、毛幹や毛包は表皮由来の細胞(上皮系成分)であり、毛乳頭と結合組織性毛包は真皮由来の結合組織性成分であるということがお分かりでしょう。

表皮由来(上皮系成分)
・毛幹(毛小皮、毛皮質、毛髄質)
・毛包(外毛根鞘、内毛根鞘)
真皮由来(結合組織性成分)
・毛乳頭
・結合組織性毛包

この上皮系成分と結合組織性成分は、さまざまなシグナル因子を放出し合い、相互に連携することで組織を作り上げるため、上皮ー間充織相互作用と呼びます。

このような組織形成はなにも毛だけに起こるのではなく、爪や歯、乳腺や脂腺、汗腺などの外分泌腺、消化管、腎臓、また鳥類の羽、魚類の鱗なども同様の現象なのです。

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