基礎知識編

【基礎知識編07】内分泌系とホルモンについて

ここからは、話を移してホルモンについて解説していきます。

細胞どうしの連絡手段

さて、ヒトは37兆2000億個もの細胞からなる多細胞生物ですので、それぞれの細胞、組織、器官が好き勝手に働いていては個体として成り立ちません。

多細胞生物がひとつの生物として成り立つためには、細胞、組織、器官どうしが互いに連絡し合い、それぞれの役割を果たしながら、協調して働くことが必要になってきます。

その細胞や組織どうしの情報伝達手段としては、神経細胞による自律神経系(神経節調節)と、ホルモンによる内分泌系(液性調節)があります。

▲身体の情報伝達手段(引用:看護roo!)

自律神経系は、神経細胞による電気信号により、ピンポイントの組織や器官に神経伝達物質を放出し、素早く情報を伝えることができます。

しかし、神経伝達物質は放出されると大部分がすぐに分解されてしまうため、長時間、持続期間な作用を発揮することができません。

一方、内分泌系は、内分泌器官が作り出したホルモンが血液中に放出されることにより、全身を巡り、複数の組織や器官に一度にまとめて情報を伝えることができます。

血流を巡るため、自律神経系より伝達速度は遅いものの、その情報を受け取った組織や器官は、持続的に、長期間効果を発揮することができるのです。

体の内側である血液中にホルモンを分泌するため「内分泌系」と呼ばれますが、一方、導管によって体の外側に汗や涙、唾液などを分泌する器官は「外分泌系」と呼ばれます。

ホルモンとは

さて、そのホルモンは何かというと、全身に分布する内分泌腺で作られ、血液中に乗って遠く離れた器官に作用し、体の機能を調節する物質のことを言います。

▲ホルモンの種類(引用:KUR鍼灸治療院)

内分泌腺は、脳の視床下部や下垂体、甲状腺、副甲状腺、膵臓、副腎、精巣、卵巣など、体のさまざまな場所に散らばっていて、ホルモンを生成、分泌する腺組織です。

それぞれの内分泌腺が分泌するホルモンの種類は決まっていて、膵臓ならインスリン、副腎はコルチゾール、精巣ならアンドロゲン、卵巣ならエストロゲンなどです。

血液中に放出されたホルモンは全身を巡りますが、作用するのはそのホルモンの受容体を持った器官だけで、その器官を「標的器官」、作用する細胞を「標的細胞」と呼びます。

ホルモンは極めて微量で作用を発揮し、血液1ml中のホルモン量で、1gの10億分の1であるng(ナノグラム)や1兆分の1であるpg(ピコグラム)という微細な単位で反応します。

視床下部と下垂体

内分泌腺は全身のあらゆる部位に散らばっているため、それらの内分泌腺を統括、指示する必要があり、中枢の内分泌腺が末梢の内分泌腺のホルモン量を調節します。

▲視床下部ー下垂体系のホルモン調節(引用:南カリフォルニア大学ケック医科大学/改)

その司令塔の役割を果たすのが、脳の視床の前方にある視床下部で、神経細胞から血中にホルモンを分泌することで、視床下部の先にぶら下がった下垂体に働きかけます。

その信号を受けた下垂体の前葉や後葉は、さまざまなホルモンを血中に分泌し、遠く離れた末梢の内分泌腺に対して作用を及ぼします。

例えば、視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)が分泌されると、それを受けた下垂体前葉が黄体形成ホルモン(LH)や卵胞刺激ホルモン(FSH)を分泌します。

下垂体から放出されたLHやFSHは、男性の精巣や女性の卵巣に働きかけて、テストステロンやエストロゲンの合成、分泌を促したり、精子や卵子の成長を促進させます。

このように、内分泌器官には上下関係があり、視床下部が会社の「社長」、脳下垂体が「部長」、全身の内分泌器官が「平社員」といったイメージだと分かりやすいでしょう。

フィードバック機構

さて、末梢の内分泌腺が分泌するホルモンが過剰になると、生体の恒常性を維持するために、そのホルモン量を抑制するなどして、調節する必要がでてきます。

▲ホルモンのフィードバック機構(引用:ソウル大学医学部内科)

その時に働くのが、やはり内分泌系の中枢である視床下部や下垂体で、末梢の内分泌腺が分泌したホルモンを、血中に流れるホルモン濃度により感知します。

そして、血中濃度が高すぎると判断すると、自身が分泌するホルモンを抑制したり、また抑制ホルモンを放出したりして、末梢の内分泌腺に対しホルモンの分泌を抑制させます。

例えば、精巣から分泌されたテストステロンの血中濃度が高くなり過ぎると、それを視床下部や下垂体が感知し、視床下部がGnRHを、下垂体がLH、FSHの分泌を抑制します。

すると、血中のLHやFSHが減ることにより、精巣に対しての作用が抑制され、テストステロン分泌が減り、血中濃度が下がることになるのです。

このように、末梢の内分泌腺が分泌するホルモンにより、上位の内分泌腺のホルモンを調整することをフィードバック機構と呼びます。

下位の内分泌腺が上位の内分泌腺のホルモン分泌を抑える反応を「負のフィードバック」、逆に上位のホルモンの分泌を促す場合は「正のフィードバック」と呼びます。

ホルモンの種類

内分泌腺が分泌するホルモンの種類は多様であり、構造で大別すると、ペプチドホルモン、ステロイドホルモン、アミン・アミノ酸誘導体に分けられます。

ホルモンの種類
・ペプチドホルモン(水溶性):アミノ酸がペプチド結合したもの
・アミン・アミノ酸誘導体(水溶性、脂溶性):アミノ酸から合成される
・ステロイドホルモン(脂溶性):コレステロールから合成される

▲水溶性ホルモンと脂溶性ホルモン(引用:看護roo!/改)

ペプチドホルモンは、アミノ酸が数個から100個程度ペプチド結合したもので、アミン・アミノ酸誘導体はアミノ酸のチロシンなどから酵素によって合成されるホルモンです。

両方とも分子量が大きく水溶性のため、リン脂質の細胞膜を通り抜けられず、細胞膜にある受容体に結合することで、細胞内で環状AMPを合成します。

そして、待ち構えていた細胞内のタンパク質を次々と活性化させることで、素早い生理機能を発揮します。

一方、ステロイドホルモンは分子量が小さく脂溶性のため、リン脂質である細胞膜を通り抜けてしまい、核内に入り込んでホルモンの受容体に結合します。

すると、そのホルモンと受容体の複合体が、核内のDNAに転写因子として働き、遺伝子を発現させることによりタンパク質を合成し、生理作用を発揮するのです。

そして、同じホルモンでも、その作用は標的器官ごとに異なり、アドレナリンは心臓に対しては心拍数を増やし、筋肉の血管を拡張、皮膚の血管には収縮の作用をもたらします。

ステロイドホルモン

ステロイドホルモンは、ステロイド骨格という特有な構造を持ったホルモンで、副腎皮質や精巣、卵巣、胎盤、脳などの器官において合成、分泌されます。

ステロイドホルモン
副腎皮質(球状層):鉱質コルチコイド(ミネラルコルチコイド)
・副腎皮質(束状層):糖質コルチコイド(グルココルチコイド)
・副腎皮質(網状層):副腎アンドロゲン
精巣:アンドロゲン
・卵巣:エストロゲン
・脳の神経細胞やグリア細胞:プロゲステロン、アンドロゲン、エストロゲン

▲ステロイドホルモンの合成経路(引用:Wikipedia/改)

副腎皮質や精巣、卵巣などでは、コレステロールを原料に、それぞれの組織内にあるさまざまな酵素で触媒され、合成、分泌されます。

副腎皮質の球状層では鉱質コルチコイドが、束状層では糖質コルチコイドが、網状層で副腎アンドロゲンとしてアンドロステンジオン、DHEAが生成されます。

男性の精巣のライディッヒ細胞ではコレステロールからテストステロンが、女性の卵巣の顆粒膜細胞ではエストラジオールが、また黄体ではプロゲステロンが直接生成されます。

また、脳で合成されるものはニューステロイドと呼ばれ、アストロサイトなどのグリア細胞はプロゲステロンやテストステロン、エストロゲンを生成、分泌します。

また、副腎や精巣から血中に放出されたアンドロゲンは、皮膚などの末梢組織においても、5αリダクターゼやアロマターゼにより、DHTやエストラジオールに合成されます。

なお、コレステロールをたくさん摂取しても、これらの合成酵素がホルモン量の生産速度を決めているため、ホルモン量は常に一定を保っています。

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