基礎知識編

【基礎知識編11】神経伝達のしくみ

ここでは、神経線維の活動電位の伝導や伝達について解説します。

電気信号を発生させる仕組み

さて、神経細胞は電気信号で情報伝達を行いますが、生体内でどうやって電気を起こすのかというと、電荷を帯びたイオンによって発生させています。

人体の体液には、ナトリウムイオン(Na+)、塩化物イオン(Cl-)、カリウムイオン(K+)、カルシウムイオン(Ca2+)などさまざまなイオンが存在しています。

▲イオンとイオンポンプ(引用:numerade/改)

そして、神経細胞などの細胞膜にはイオンポンプと呼ばれるイオンを通すタンパク質や、カリウムイオン漏洩チャネルという特殊なタンパク質が埋め込まれています。

イオンポンプは、エネルギーを利用して神経細胞内のナトリウムイオン(Na+)3つを神経細胞外に出し、カリウムイオン(K+)2つを神経細胞内に取り入れています。

また、カリウムイオン漏洩チャネルは、常に開いていて、細胞内に取り入れたK+の一部が漏れ出るような仕組みになっています。

これらの作用により、細胞外は陽イオンが多くなり、相対的に細胞内がマイナスに帯電することで、細胞内外で電位差が生じている状態になっています。

この電位差を「静止膜電位」と呼び、神経細胞では細胞内が-70mV程度になっていて、この仕組みにより外部の刺激を、すぐに電気信号に変換できるようにしています。

刺激による活動電位の発生

さて、神経細胞内外にあるイオンには、Na+やCl-、K+、Ca2+などがありますが、これらは神経細胞の細胞膜を自由に通り抜けられません。

しかし、神経細胞の細胞膜には、イオンポンプなどの他にも「イオンチャネル」という細い穴の開いたタンパク質がいくつも埋め込まれています。

「チャネル」とは、本来、船舶が航行する時の水路や海峡などの「水の通り道」という意味で、「イオンチャネル」はイオンを透過させるタンパク質のことです。

▲イオンチャネルの開閉と活動電位の発生

イオンチャネルには、Na+を通すナトリウムイオン(Na+)チャネルや、K+を通すカリウムイオン(K+)チャネルがあり、それぞれNa+やK+を通すことができます。

そして、神経細胞が痛みや温度などの刺激を受けると、それに反応してNa+チャネルが開き、神経細胞外に多いNa+が一気に細胞内に流入してきます。

これを「脱分極」と呼び、細胞内の電荷が一時的にプラスに変化します。

すると、今度はその電位の変化を感じ取ったK+チャネルが開くことにより、神経細胞内に多いK+が細胞外に流出し、再分極といって細胞内が再びマイナスに戻ります。

その一瞬の電位の変化を「活動電位(インパルス、発火)」と呼び、このようにして受けた刺激を電気信号に変換するのです。

その後は、再度ナトリウムポンプにより、細胞内に入ったNa+を細胞外へ、細胞外に出たK+を細胞内に輸送することで徐々に静止膜電位に戻し、次の刺激に備えます。

イオンチャネルの種類

さて、イオンチャネルにはさまざまな種類があり、通過させるイオンの種類や、チャネルを開かせる条件などによって、いくつかに分類されます。

通すイオンの種類による分類
・Na+(ナトリウムイオン)
・K+(カリウムイオン)
・Ca2+(カルシウムイオン)
・Cl-(塩化物イオン)
イオンチャネルが開く条件による分類
・電位依存性(電位の変化を感じ取って開く)
・リガンド依存性(特定の物質が結合して開く)
・機械的刺激依存性(物理的な刺激を受けて開く)
・温度感受性(温度を感じ取って開く)
・酸感受性(pHの差を感じ取って開く)
・漏洩チャネル(常時開いている)

▲イオンチャネルの種類(引用:Shutter Stock/改)

Na+を通すイオンチャネルはNa+チャネル(ナトリウムイオンチャネル)、K+を通すイオンチャネルをK+チャネル(カリウムイオンチャネル)と呼びます。

また、電位依存性とは細胞内外の電位の変化を感知すると開き、リガンド依存性とは特定の物質(リガンド)が結合することによって開くイオンチャネルです。

リガンドとは、鍵穴に作用する「鍵」のような物で、イオンチャネルに「鍵穴」があり、それに結合することができる物質のことです。

機械的刺激依存性は物理的な刺激を受けることによって開き、温度感受性は特定の温度を感じて開き、漏出性は常に開いているイオンチャネルのことです。

先ほどの、活動電位の伝導の際に働くイオンチャネルは、細胞内外の電位差を感知してNa+を通すのが電位依存性Na+チャネル、K+を通すのが電位依存性K+チャネルです。

活動電位の伝導

さて、神経細胞の末端部分にはイオンチャネルが埋め込まれていますが、実は軸索突起部分にもNa+チャネルやK+チャネルがずらっと並んでいます。

▲活動電位の伝導(引用:Addison Wesley Longman/改)

そして、皮膚などの末梢部分で受けた痛みや温度などの情報は、電気信号(活動電位)として変換され、神経細胞内が局所的にプラスに変化します。

すると、その電位を感知した隣の電位依存性Na+チャネルが開き、神経細胞外からNa+を流入させ、電位依存性K+チャネルが開いてK+が流出することで活動電位が伝わります。

すると、また隣のNa+チャネルが開いて…というふうに、イオンチャネルが次々に開いたり閉じたりすることによって、活動電位が神経細胞内を伝導していきます。

ここで注意してほしいのが、活動電位が発生すると両隣の電位依存性Na+チャネルが開くため、活動電位は一方通行ではなく、両方向に伝導していくということです。

末梢側の神経終末で発生した活動電位は、脊髄側の神経終末へと一方通行ですが、神経線維の途中で発生した活動電位は、末梢側と脊髄側の両方向に伝導していくことになります。

このようにして、神経細胞は電気信号を伝えるのです。

有髄線維の跳躍伝導

さて、神経細胞には軸索突起が髄鞘で覆われている「有髄線維」と、髄鞘がない「無髄線維」がありますが、上記の活動電位の伝導は無髄線維のものです。

▲有髄線維と無髄線維の活動電位の伝導(引用:Shutter Stock/改)

有髄線維は、神経線維を髄鞘で覆うことで電気的に絶縁されていて、イオンチャネルは髄鞘のない部分(ランヴィエ絞輪)に集中して存在します。

有髄線維では、皮膚などで受けた刺激により活動電位が発生すると、髄鞘を飛び越えたランヴィエ絞輪部分にあるNa+チャネルが開くため、活動電位が飛び越えます。

そのため、有髄線維は非常に速い速度で活動電位伝わることになり、これを「跳躍伝導」と呼び、骨格筋の運動神経などに用いられます。

一方、無髄線維の方は、順々に隣のNa+チャネルが開いて活動電位の伝わっていくため、伝導速度が遅くなり、自律神経や感覚神経の一部に用いられます。

活動電位の伝達

さて、感覚神経の神経細胞終末は、主に背骨の中にある脊髄に入り込み、ここで別の神経細胞に乗り換えてから、中枢神経である脳へと信号が送られます。

▲シナプスでの活動電位の伝達(引用:kristenblais/改

しかし、その神経細胞どうしは密着しておらず、僅かに隙間のある「シナプス」という接続構造を持ち、神経伝達物質を放出することによって、刺激が伝達されます。

感覚神経の活動電位が脊髄側の神経終末まで伝わると、その電位差を感知して電位依存性Ca2+チャネルが開き、Ca2+が神経細胞内に流入します。

神経細胞内には、神経伝達物質が詰まったシナプス小胞が多数存在し、Ca2+の増加に反応して、シナプス小胞がシナプス間隙部分のシナプス前膜に融合します。

すると、シナプス小胞内に含まれているグルタミン酸などの神経伝達物質が放出され、次の神経線維のイオンチャネルなどの受容体に結合します。

すると、そのイオンチャネルが開き、次の神経細胞内にNa+などが流入して活動電位が伝達され、その神経細胞は脳へと繋がり、そこで感覚を感じ取るのです。

逆行性伝導

さて、脊髄から伸びている感覚神経線維は、広範囲に及ぶ皮膚表面の刺激を受け取るため、神経線維が途中で枝分かれし、末梢側の神経終末を複数持っている場合が多くあります。

▲侵害刺激による軸索反射(引用:楽々痛み研究会)

ここで、ある末梢側の神経終末に刺激が加わると、発生した活動電位は脊髄側の神経終末まで、一方通行で伝わることになります。

しかし、活動電位は両方向に伝導するため、神経線維が途中で枝分かれしていると、どちらの方向にも活動電位が伝わり、活動電位が別の末梢側の神経終末に戻るという現象が生じます。

すると、末梢側の神経終末では、脊髄側と同じように神経伝達物質が放出されて、近辺の血管や免疫細胞に影響を及ぼし、これを軸索反射、または逆行性伝導と呼びます。

末梢側の神経終末から、後に説明するCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)やSP(サブスタンスP)が放出されると、神経原性炎症と呼ばれる炎症の原因になるのです。

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