基礎知識編

【基礎知識編12】感覚神経について

ここでは、末梢神経である感覚神経とその受容器について解説します。

感覚の分類

さて、感覚神経が受け取る刺激というと、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の「五感」とよく言われます。

しかし、それは古代ギリシアの哲学者アリストテレスが分類したもので、現代ではもっと細かく分類できることが分かっています。

▲感覚の分類(引用:看護roo!)

五感の内の、視覚、聴覚、嗅覚、味覚などは、目、耳、鼻、舌などそれぞれ特殊な感覚器受容器が発達しているので「特殊感覚」と呼ばれます。

それ以外は一般感覚と呼ばれ、さらに皮膚などで感じる「皮膚感覚」、筋肉などの動きを感じ取る「深部感覚」、臓器の状態を感じる「内臓感覚」に分けられます。

感覚受容器とは、受け取った刺激を電気信号に変換する器官であり、特殊感覚の受容器はその機能に特化しているため「非神経性の感覚受容器」と呼ばれます。

一方、皮膚感覚には、皮膚表面で感じる、触った感じ(触覚)、押される感じ(圧覚)、熱さ(温覚)、冷たさ(冷覚)、痛み(痛覚)、痒み(痒覚)などがあります。

それらの刺激は、特殊な感覚受容器ではなく、神経線維の一部が刺激を感知する構造のため「神経性の感覚受容器」と呼ばれ、その神経線維はそのまま脊髄へと入り込みます。

皮膚は、ほとんどが神経性の感覚受容器で、触覚や圧覚はメルケル盤、マイスナー小体、ルフィニ終末、毛包受容器などの神経線維が変化した受容器が感知します。

一方、熱さや冷たさ、痛み、痒みは、神経線維が受容器として発達しておらず、ただ髄鞘部分が外れただけの自由神経終末部分で感知し、電気信号に変換されるのです。

皮膚感覚の神経線維

さて、皮膚の感覚受容器で受け取った刺激は、体内のイオンにより電気信号に変換され、神経線維を通して、脊髄や脳などの中枢神経へと送られます。

その神経線維の種類には3種類あり、触覚の神経線維は有髄Aβ線維で、痛覚(鋭い痛み)の神経線維は有髄Aδ線維、痛覚(鈍い痛み)や温度、痒みの神経線維が無髄C線維です。

▲皮膚感覚の3種類の神経線維(引用:Chegg/改)

皮膚から触覚情報(非侵害性機械刺激)を受け取ったマイスナー小体やパチニ小体などの感覚器は、非常に太い有髄Aβ線維を通して、素早く中枢へと信号を送ります。

一方、痛覚(鋭い痛み)(侵害性機械刺激)の情報は、自由神経終末の髄鞘が外れた部分で受け取り、太い有髄Aδ線維を通して、素早く中枢へと信号が送られます。

そして、痛覚(鈍い痛み)、温度、痒みなどの情報は、同じく自由神経終末の髄鞘が外れた部分で受け取り、細い無髄C線維がゆっくりと中枢へと情報を伝えます。

例えば、タンスの角に足の小指をぶつけた時、瞬間的な鋭い痛みが有髄Aδ線維によるもので、その後、じわじわと鈍い痛みが襲ってくるのが無髄C線維によるものなのです。

無髄C線維のポリモーダル受容器

さて、自由神経終末がどうやって痛覚や温度、痒みを受け取っているのかというと、神経終末の細胞膜に、特別な受容体やイオンチャネルが埋め込まれているからです。

鋭い痛みを受容する有髄Aδ線維の神経終末の部分には、強い機械的刺激、熱痛刺激に反応するタイプⅠ受容器と熱痛刺激に反応するタイプⅡ受容器が存在します。

一方、鈍い痛みを受け取る無髄C線維の神経終末には、ポリモーダル受容器と呼ばれる、さまざまな受容体やイオンチャネルが埋め込まれた特殊な構造があります。

ポリモーダル受容器にある受容体やイオンチャネル
・侵害性機械刺激受容器
TRPチャネル(温度、痛み、酸刺激などの多刺激受容体)
・ASICチャネル(酸刺激の受容体)
・P2X/P2Y(ATP受容体)
・B2/B1(ブラジキニン受容体)
・EP/IP(プロスタグランジン受容体)
・TrkA(神経成長因子受容体)など

▲無髄C線維のポリモーダル受容器(引用:痛みと沈痛の基礎知識)

ポリモーダル受容器は、これらの受容体やイオンチャネルにより、鈍い痛み、熱刺激、酸刺激、化学的刺激などたくさんの刺激を受け取ることができるのです。

この名称は、ポリ(多くの)モード(様式)の刺激に反応するという意味で、視覚や嗅覚のように特定の刺激の受容に特化していないため、未分化で原始的な受容器とされます。

これが、無髄C線維の自由神経終末にあるため、痛み、温度、酸などのさまざまな刺激を受け取ることができ、その刺激は全て「痛みの電気信号」として中枢へと送られるのです。

また、ポリモーダル受容器は、痛みを引き起こさない物質にも反応しますが、それは意識に上らないだけで、反射経路を通してさまざまな生体反応を引き起こしています。

意識に上らない感覚

さて、皮膚感覚と言っても、普段の生活において「物に触れている」「温度を感じる」などの情報はほとんど意識に上らないと思います。

快適な気温は、その温度を敢えて感じ取ることはありませんし、ペンを持っている時は、よっぽど意識しない限り、ペンに触っているという感覚を持ちません。

また、少し熱めの風呂に入ると、最初は熱く感じますが、しだいに慣れて熱さを感じなくなります。

それは、これらの外部からの情報が身体に危害を及ぼすものではないため、神経細胞が脳へと、その信号を送らなくなっているのです。

というのも、脳は全身から送られる無数の情報にさらされているので、脳のパンクを避けるため、体に危害を及ぼさないような情報は敢えて遮断しているのです。

慣れることのない感覚

一方、毬栗いがぐりを握りしめると、「触れている」という感覚より、「痛み」という感覚に変化し、ずっと握りしめても慣れることはありません。

また、非常に熱いお風呂に入っても、「温かさ」という感覚ではなく、「痛み」という感覚を覚え、入り続けていてもなかなか慣れません。

一方、冷たすぎる温度も同様で、冷たい水は「冷たさ」ではなく「痛み」として感じ取り、同じようにずっと触れていても慣れることはありません。

それは、これらの刺激や温度が、身体を構成するタンパク質にダメージを与え始めているためであり、痛みの情報として脳へと「危険信号」を発し続けているからです。

▲温冷刺激が侵害刺激に変わる温度と神経活動のようす(引用:関西医科大学/改

触覚や圧覚が痛覚に変わる境目を数値化するのは難しいですが、温度に関してはしっかりとした境目があり、それが「43℃以上」と「15℃以下」という温度なのです。

43℃~15℃は人間にとっての適温とされ、「温刺激」「冷刺激」として感知されますが、この範囲を逸脱すると「熱侵害刺激」「冷侵害刺激」という痛みの情報に変わります。

そのため、自由神経終末は「温度」と「痛み」の両方を感知する神経として働くのです。

ちなみに、43℃以上15℃未満という温度は、水温に比べ気温ではあまり痛みを感じませんが、それは皮膚表面に空気の層があり、断熱効果を生んでいるためです。

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