基礎知識編

【基礎知識編19】皮下組織について

ここでは、皮膚の下層に広がる皮下組織の構造と、それを構成する脂肪細胞について解説します。

皮下組織とは

皮下組織(皮下脂肪組織)は真皮と筋層の間に広がる脂肪組織で、「皮下」というだけあって、皮膚には分類されませんが、機能面では皮膚といっても過言ではありません。

皮下組織の厚さは一般的に4~9mmほどですが、頭皮や額、鼻では薄く2mmほど、また肥満の人は脂肪細胞が溜まるため、3cm以上、重さは15kgにもなる場合もあります。

皮下組織は、部位では腹部や臀部、大腿部、腕、頬、乳房などに、性別では男性より女性の方が厚く、特に新生児や思春期の頃に増大して、皮下脂肪が溜まります。

皮下組織の役割としては、豊富な中性脂肪によるエネルギー源の保持、発熱作用、体温保持作用、機械的な外力からの保護やクッション作用があります。

皮下組織の構造

皮下組織は、大部分が脂肪細胞からなり、浅筋膜(皮下筋膜)と呼ばれる筋膜によって、浅層脂肪組織と深層脂肪組織の2層に隔てられています。

真皮と皮下組織の境は明瞭ではなく、真皮で生まれた膠原線維束の一部が縦に走り、筋肉や骨を覆う筋膜や骨膜と結合する皮膚支帯を構成することで、皮膚を支えています。

▲皮下組織の構造(引用:learn muscles)

浅層の皮膚支帯は縦に走り、動きが少なく、外力に対する防御機能を担い、深層の皮膚支帯は流動的であり、筋肉や骨格が動いても皮膚がずれないようにする緩衝作用をもちます。

皮膚支帯の間を埋める脂肪細胞は、いくつかが集まって脂肪小葉を構成し、他の脂肪小葉とは脂肪隔壁によって区切られ、その隔壁に血管網やリンパ管、神経が走っています。

皮下組織は他にも、神経終末のパチニ小体、免疫細胞ではリンパ球やマクロファージなども存在し、脂肪組織の機能を調整するとともに、慢性炎症にも関与しています。

また、主に頭皮などでは成長期の毛包が、腋などではアポクリン汗腺が、手の平や足底などではエクリン汗腺が真皮から発生して、皮下組織内部まで入り込んでいます。

脂肪細胞は大部分がエネルギー貯蔵の役割を持つ白色脂肪細胞ですが、他にもエネルギーを燃焼する働きのある褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞も存在しています。

白色脂肪細胞

一般的に「脂肪」と呼ばれる場合は、白色脂肪細胞を指し、その名の通り、内部にパンパンに蓄えられた脂肪により白い球形をしている細胞です。

▲脂肪細胞の種類(引用:123rf)

白色脂肪細胞は、細胞小器官である巨大な脂肪滴が一つありエネルギー貯蔵としての役割を持つため、パンパンに膨らんでいて、他の細胞小器官は端へ追いやられています。

脂肪滴内には中性脂肪としてトリアシルグリセロールを蓄え、飢餓などの状態になると分解されて脂肪酸になり、細胞外に放出されて全身の細胞にエネルギー源として供給されます。

食事により血中に脂質や糖が豊富になると、それを取り込んで中性脂肪として蓄え、その量が過度になると、白色脂肪細胞の数が増えて、巨大化し、肥満の原因になります。

白色脂肪細胞のホルモン

白色脂肪細胞は、エネルギーを蓄えるだけでなく、さまざまなホルモンを分泌する働きがあり、さらに内部の脂肪滴が大きくなると、そのホルモンの種類が変化します

▲白色脂肪細胞のホルモ分泌(引用:名古屋ハートセンター)

まず、通常の白色脂肪細胞は、アディポネクチンやレプチンと言ったアディポサイトカインと呼ばれるタンパク性の因子群を分泌します。

アディポネクチンには血管壁を修復したり炎症を抑える作用があるため、糖尿病、動脈硬化を抑制し、レプチンは脳の満腹中枢に作用して食欲を抑え、熱産生を活発にします。

しかし、脂肪滴がさらに肥大化すると機能不全になってアディポネクチンの分泌が減少し、代わりにアンジオテンシンⅡ、MCP-1、PAI-1、TNF-αなどの悪性因子を放出します。

アンジオテンシンは高血圧、MCP-1は動脈硬化、PAI-1は血栓形成、TNF-αは糖尿病などを招くため、太りすぎは生活習慣病を招くのです。

また、脂肪を蓄えた白色脂肪細胞はアロマターゼを発現しているため、テストステロンからエストロゲンを合成し、閉経後の女性の主要なエストロゲンにもなります。

そのため、肥満になると男性でもエストロゲン濃度が高くなって軽い女性化が見られ、また若い女性の過度なダイエットはエストロゲンの低下を招いて月経不順を起こします。

褐色脂肪細胞

褐色脂肪細胞は、細胞内が複数の小さい脂肪滴と無数のミトコンドリアで満たされている細胞で、ミトコンドリアは鉄を含むため、その名の通り細胞が赤褐色をしています。

▲褐色脂肪細胞の熱産生(引用:Trisha Gura)

褐色脂肪細胞には交感神経が無数に接続していて、寒さや食事などの刺激により交感神経が活性化されると、ノルアドレナリンが放出されて細胞膜のβ3受容体に作用します。

すると、ミトコンドリア内に脱共役タンパク質(UCP1)が発現し、それが脂肪酸やグルコースを酸化分解して、水素イオン濃度勾配をATP合成ではなく熱産生へと誘導します。

褐色脂肪細胞の熱産生能力は骨格筋の70~100倍もあるともいわれ、中性脂肪の大部分を熱エネルギーに変換することで、寒冷時や食事時に熱産生を通して体温調節機能を担います。

褐色脂肪細胞は、特に新生児の肩甲骨間や腎周囲に多く、高温の母胎内から出て、寒い外気に出るという過酷な環境に対応するため、熱産生を盛んに行って生命維持を図っています。

その後、褐色脂肪細胞は年齢と共に減少していきますが、逆に白色脂肪細胞の方は増加するため、褐色脂肪細胞の減少や機能低下は肥満の原因になります。

ベージュ脂肪細胞

ベージュ脂肪細胞は褐色脂肪細胞に似ていて、細胞内に多房性脂肪滴を持ち、特異的タンパク質UCP-1を発現したミトコンドリアに富んでいるという特徴があります。

褐色脂肪細胞は乳幼児の肩甲骨間や腎周囲に存在しますが、ベージュ脂肪細胞は成人の鎖骨上窩部や傍脊椎部などの白色脂肪細胞中に散在していて、存在部位が異なります。

▲褐色脂肪細胞とベージュ脂肪細胞の位置((引用:糖尿病リソースガイド)

ベージュ脂肪細胞は、寒冷刺激やノルアドレナリンなどの刺激を受けると、白色脂肪細胞内のcAMPが増加してUCP-1が高発現し、褐色化することで熱産生を行います。

つまり、褐色脂肪細胞と同じような働きをしますが、これらの刺激がなくなると白色脂肪細胞に戻るという、誘導性、可塑性かそせいを持った特徴的な細胞なのです。

褐色脂肪細胞は、急性の寒冷環境への変化を担うのに対し、ベージュ脂肪細胞は長期の寒冷環境に対する慢性適応を担うとされています。

このように、ベージュ脂肪細胞は白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の中間的な特徴を持ちますが、これらの細胞とは異なる独自の遺伝子発現パターンを示しているため、異なる存在といえます。

次へ▶【基礎知識編20】皮膚の血管、リンパ管