基礎知識編

【基礎知識編13】TRPチャネルについて

ここでは、TRPチャネルという特殊なイオンチャネルについて解説します。

TRPチャネルとは

感覚神経の無髄C線維にあるポリモーダル受容器には、さまざまな受容体やイオンチャネルが発現していますが、その中にあるのがTRPトリップチャネルというイオンチャネルです。

TRPチャネル(一過性受容体電位型チャネル)にはく種類があり、それ単体でさまざまな温度や痛み、酸、化学物質など多数の刺激を受け取ることができます。

▲TRPスーパーファミリー(引用:Science of Kampo Medicine/改

TRPチャネルは、TRPV、TRPC、TRPM、TRPP、TRPML、TRPA、TRPNの7つのグループがあり、ヒトではTRPNを除く6グループ、合計27種類あることが分かっています。

これらのイオンチャネルは、それぞれ作用する刺激や物質などが異なり、中でも温度を感知することができるチャネルを「温度感受性TRPチャネル」と呼びます。

温度感受性TRPチャネルには、TRPV1トリップブイワン、TRPV2、TRPV3、TRPV4、TRPM2、TRPM4、TRPM5、TRPM8、TRPA1の9つがあり、それぞれ感知する温度が異なります。

温度感受性TRPチャネル

温度感受性TRPチャネルは、チャネルごとにさまざまな温度を感知することができ、また感知する温度にもある程度の幅があります。

▲TRPチャネルの温度変化による活性化の違い(引用:The University of Iowa/改)

TRPA1は17℃以下TRPM8は25~28℃、TRPV4は27~35℃、TRPV3は32~39℃、TRPV1は43℃以上、TRPV2は52℃以上などのようになっています。

ここで思い出してほしいのが、ヒトが温度の刺激である「温刺激」から、痛みの刺激に代わる「侵害刺激」の温度で、43℃以上と15℃以下でした。

そして、TRPV1はその43℃以上、TRPV2が52℃以上で、TRPA1は17℃以下で活性化されるため、これらのTRPチャネルは43℃以上、15℃以下になると痛みの刺激に変わります

つまり、TRPV1とTRPV2、TRPA1は、温度」を感知しつつ、「痛み」も感知するという、両方の感覚器受容器ということになります。

そして、無髄C線維の自由神経終末には、TRPV1とTRPA1は一緒に発現している場合が多く、感知した温度を「痛み刺激」として、脳へと送っています。

TRPチャネルを活性化させる物質

また、TRPチャネルは温度だけに反応するのではなく、機械的刺激や酸刺激、化学物質など、さまざまな刺激で活性化されるのです。

下記の表は、温度感受性TRPチャネルを活性化させる物質をまとめたものです。

▲温度感受性TRPチャネルの性質と主な発現部位、関連疾患(引用:漢方医学)

TRPV1は43℃以上の熱だけではなく、機械的刺激や酸刺激、唐辛子のカプサイシン、生姜のジンゲロール、黒コショウのピペリンなどでも活性化されます。

TRPM8は、25~28℃で活性化される冷刺激受容体で、ミントの成分であるメントールなどでも活性化され、冷刺激を受容します。

また、TRPA1は、17℃以下の例刺激やワサビのアリルイソチオシアネート、シナモンのシンナムアルデヒド、ニンニクのアリシン、青魚のDHA、乳酸などでも活性化されます。

上記の表を見ても分かる通り、TRPチャネルを活性化させる物質には、植物由来のファイトケミカルが多く、それらを食べることで、ヒトの身体は刺激を受けているのです。

TRPV1とは

TRPチャネルの中で、最初に発見されたのが、カプサイシン受容体と呼ばれるTRPV1で、最も盛んに研究されているTRPチャネルです。

▲TRPV1チャネルを活性化させる物質(引用:基礎生物学研究所/改)

TRPV1に作用する物質
・温度:43℃以上
・機械的刺激:痛み刺激
・酸:pH6.0以下
・浸透圧:細胞外での上昇
・リガンド:サブスタンスP、神経成長因子、炎症関連メディエーター
・リガンド:カプサイシン、ジンゲロール、ピペリンなど多数
TRPV1が通すイオン
・Na+(ナトリウムイオン)
・Ca2+(カルシウムイオン)

TRPV1は43℃以上の熱刺激や機械的刺激、pH6.0以下の酸刺激、唐辛子のカプサイシン、生姜のジンゲロールなど、実に多数の刺激を感知し、Na+とCa2+を通します。

つまり、TRPV1は、温度感受性、械的刺激依存性、酸感受性、リガンド依存性、Na+、Ca2+透過性イオンチャネルという、一風変わったチャネルなのです。

そして、これらの刺激のいずれかがTRPV1に作用すると、イオンチャネルが開いてNa+とCa2+を細胞内に通し、活動電位を発生させて、全て「痛み」として感知されます。

唐辛子を食べると「辛さ」より、ヒリヒリとした「痛み」を覚えますが、これは舌の感覚神経のTRPV1がカプサイシンにより活性化され、痛みの信号として感じ取るためです。

TRPチャネルの作用温度は変化する

TRPV1はさまざまな条件で活性化されますが、複数の刺激が同時に作用したり、TRPV1自体がリン酸化されると、43℃という作用温度が大幅に変化することが分かっています。

▲炎症関連メディエーターによるTRPV1の感作(引用:漢方医学)

例えば、TRPV1がカプサイシンの刺激を受けると、通常なら反応しない30℃程度の熱でも活性化されて、Na+、Ca2+の流入を引き起こし、痛みを感じます。

唐辛子を食べた後に熱いお茶を飲むと、舌が余計にヒリヒリして痛みを感じたり、逆に冷蔵庫で冷ましたカレーは、あまり辛く感じなかったりするのはそのためです。

また、ATPやプロスタグランジンE2などの炎症関連メディエーターがポリモーダル受容器に作用すると、タンパク質リン酸化酵素が活性化され、TRPV1がリン酸化されます。

すると、こちらでもTRPV1の活性化閾値が大幅に下がり、上の図のように30℃程度の熱を受けても、イオンチャネルが開き、痛みが増強されるのです。

また、TRPM8は25~28℃の温度で活性化されますが、ミントの成分であるメントールが作用すると、今度はその活性化閾値が上がり、より高い温度でも活性化されます。

アイスクリームなどでよくミントが使われているのは、感覚神経のTRPM8に作用することで、より冷感を感じやすくしているのです。

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